【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
押し黙っている莉胡が、何を考えてるのはわからないけど。それを探る余裕すらない。
背中に触れている彼女の腕が、俺の頭をそっと抱き締めるみたいに包んでくれたから、きっと莉胡なりの対応で。
「……そんなことにこだわらなくていいんじゃない?」
「、そんなことって、」
俺にとって自慢だって言ってたの聞いてたでしょ?と。
顔を上げれば莉胡はなぜか優しい笑みを俺に向けて、「ばかね」とくちびるで俺の額に触れた。
「たとえ白葉が、わたしをずっと好きだったとしても。
ほら、結局わたしが付き合ってるのって千瀬じゃない」
「………」
「十色とははじめて付き合って、織春と付き合ったときはスパイだったから迷惑もかけたけど、その分東西の関係も良くなって。
……でも結局、わたしふたりと別れてるし」
……それはそうだけど。
やっぱり、と思ってしまうあたり、俺ってちょっと女々しい?
「いまわたしが好きなのは千瀬で、これから先もずっと千瀬といるつもりなのよ。
……じゃあ、これから重ねていく時間は千瀬が一番長いと思うけど?」
「……莉胡」
「そもそも、もし仮に白葉の方がわたしのこと長く好きだったとしても。
こうやって一緒に過ごした時間はきっとわたしの中で、千瀬が一番長いと思うのよ。家族よりもずっと長い時間一緒にいるんだもの」
「………」
「だから千瀬が自信なくすようなことないじゃない」
……ああ、もう。いつだってそうだ。
俺が自信をなくすたびに、莉胡がこうやって照らしてくれる。道をくれる。──だから、ずっと俺は莉胡だけを好きでいられた。