【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「……敵わない」
唐突な気分の悪さは、莉胡の言葉で途端になくなる。
敵わないと思いながらも、やっぱりそれが心地よくて。抱きしめてくれる莉胡の胸に顔をうずめて、目を閉じた。
「……じゃあ、俺に自信ちょうだい」
「……千瀬」
「俺が"いちばん"だって自信」
ちらっと目元だけを上げてくぐもった声で強請れば、「ずっと千瀬がわたしのいちばん」と囁いてくれる莉胡。
正直それだけでもうれしいけど。足りなくなって「キスは?」と言えば、文句も言わずにしてくれた。
……時間なんかに、こだわらなくても。
莉胡がくれる"言葉"と"愛情"は、俺だけのもの。
「好きだよ莉胡」
「うん、わたしもだいすき」
「……俺のそばにいて」
求めれば求めた分だけくれる。
物足りないと感じる時はもちろんあるけれど、もう俺の一方通行な片思いじゃない。……莉胡の、"いちばん"だから。
「……ミヤケたちに連絡しようか。
白葉の正体が、ようやくわかったって」
「ふふ、うん。
……千瀬なら、だいじょうぶ」
電話すると言ったらさすがに腕は離されたけど、俺を安心させるみたいにずっと横にいてくれた。
……今だけじゃない。莉胡はいつだって、俺のそばにいてくれた。──ずっと、ずっと前から。