【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「何やって待っててもどうせ来るんだしさ。
それならのんきに待ってる方がいいでしょ」
「理にかなってるけどなんか違うんだよな……
まあいいか。俺らも負ける気しねえからなー」
のんきにくあっと欠伸しているミヤケ。
負ける気がしないというのは本当で、月霞も累もメンバーは集めてない。けれど今日この倉庫の人口がやけに高いのは、千瀬の誕生日を祝うためだ。
つまりみんな今から起こるであろうHTDとのことよりも、自分たちの総長の誕生日の方が大事だと準備しているわけで。
それでこそ月霞ね、とくすくす笑っていたら。
外で響くエンジン音。
多くないそれは、HTDのものだとわかる。
「……行こうか」
差し出された手それを重ねて、千瀬と下へ降りる。
下っ端のみんなもエンジン音には反応したみたいだけど、やっぱり気にしていないようで、倉庫内はにぎやかだ。
「やっと来たんだ?
ずいぶんと、待ちくたびれたよ」
「ちゃんと時間は連絡してあっただろうが」
「まあね。
お姫様は祝われる張本人よりもケーキ食べたがってたけど」
「……なっ。
別に千瀬より先に食べようなんて思ってないもん。……ケーキ食べたいけど」
言えば、ふっと笑う千瀬。
幹部は一応揃っているけれど、外にはわたしと千瀬と、出たところにいるミヤケだけ。あとはみんな倉庫内にいて、特攻服を着てるのも千瀬だけ。
対するHTD側は、白葉 万智と、ミケと、あともうひとりの幹部らしき男のみ。宣言通り人数は少ない。
ちらり、とわたしたちを一瞥した白葉 万智は、ゆっくりと口を開く。
「夏川莉胡。──お前を迎えに来た」