【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



迎えに来た、と言われても。

わたしは千瀬から離れる気はない。つないだ手に力を込めて、くすりと微笑んでみせる。



「迎えに来られても……

わたしはHTDには行かないわよ?"まーくん"」



「……、

なんだ、覚えてたのか」



「つい最近まで忘れてたけれど。

ずっと引っかかってたのを思い出したのよ」



ごめんね?と。

謝れば、チッと舌打ちする白葉 万智。それから、でも、と言って取り出すのは茶封筒。……あれ、半年ぐらい前に似たような展開なかったっけ?



「……どうするかは、これの中身を見てから決めろ」



「……中身を見なくても莉胡は譲らないけどね」




わたしの頭をぽんぽんと撫でて離れた千瀬は、その茶封筒を手に取って、中を覗く。

それから一瞬顔をしかめたけど、「こんなの合成でもなんとかなるよ」と言った千瀬。残念ながらそれは合成ではないのだけれど。



ミケの家で、同意の上で撮った写真。

もちろんわたしは、何も無条件にそれを許可したわけじゃない。



「ふっ。合成なわけないだろ」



「……、於実は月霞の幹部だから。

どうするかの判断は俺がする。HTDとは関係ない」



「でも、

莉胡がその幹部と関係を持ったのは事実だろ?」



「言っとくけどこんなんじゃ裏切りにならないから。

この写真見ると割と平然とした顔して莉胡うつってるけどさ。……俺との時は、こんな平然とした顔してないよね」



え、ええと、千瀬さん……?

「もっと蕩けた顔してるよね」じゃなくて、ですね……いや、問題そこなの!?わたしの表情なの!?



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