【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
たしかに千瀬との時は、もっと千瀬のこと好きです……!って顔してるとは思うけど……!
そこなの!?と目を見張るわたしと、「つまんなさそう」なんてつぶやく千瀬。たしかに写真撮ってるだけだからそんな表情にはならないけど……!
「ああでも、言っとくけど於実は絶対こんなことしないよ。
……っていうかこんなに俺のこと好きな莉胡が、ほかの男にこんなことされて隠し通せるわけないし」
「………」
「つくならもうちょいマシな嘘にすれば?」
本来なら、ここで終わりなのだけれど。
念入りなミケが、そんな簡単に終わらせるわけがない。「残念だね」とミケがつぶやいたかと思えば、うしろから耳を撫でる声。
「……千瀬さん。すみません」
「……於実」
倉庫内にいたはずなのに外へ出てきていた於実が声をかけると、くっと手を引かれていつもと違う体温の中。
ほかの人の腕の中で千瀬を見るなんて滅多にないなと思いながら、その不機嫌そうな顔をじっと見る。
「……もしほんとに於実が好きだって言うなら、
相当莉胡は演技がうまいよね」
「……俺が一方的に好きなだけです」
「ふぅん?じゃあこれの言い訳してくれる?」
「………」
「……言えるわけないか。
どうせテキトーに写真撮っただけだろうし」
はあ、とため息をついた千瀬。
強引に腕を引いて取り戻すのかと思いきや、そんなことはなく。「莉胡」と名前を呼ばれて彼を見れば、千瀬は優しく微笑んでたった一言だけ口にした。