【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
うん。その気持ちはよくわかる。
わたしも何も知らない立場にいたら、間違いなく同じように「は?」って言ってると思う。だけど。
「まーくんのいとこが……
ミヤケの彼女だって、知ってた?」
「はあ!?」
言っておくけれどいまの「はあ!?」は千瀬じゃない。何も彼がキャラ崩壊に陥ったわけじゃない。
ドア近くでずっとわたしたちの会話を見ていたミヤケの声だ。
「え?は?ちょっとまて。
あいつが、お前のいとこなのかよ!?」
「それでね、ほら、由真ちゃんとミヤケの彼女って……
わたしたちが付き合う前、ミヤケがわたしと千瀬に『上手くいってほしい』って散々言ってたの聞いてたでしょ?」
それはもう、飽きるほどにわたしと千瀬がうまくいってほしいと、ミヤケは言っていたらしい。
そしてミヤケの彼女は、もちろんわたしと千瀬が付き合ったことも知っていたのだけれど。
「ミヤケがあまりにも言ってたから……
付き合ってから別れちゃわないか不安になったらしくて。……まーくんに協力してもらったらしいのよ」
「は?……は?ってことは。
あいつのお節介でこうなってんのかよ!?」
「まあ一言で言えばそうよね」
「あいつ……、
ああもう、どこをどう見てもこのふたりはバカップルだろうが……っ」
頭を抱えるミヤケ。
でも元はと言えば、ミヤケがあんなにも由真ちゃんや彼女に心配だと言っていたのが原因なわけで。
「お前いい加減にしろよ……」
あきれたような千瀬のため息は大きい。
つまりすべてを合わせると、わたしを攫いに来たわけではなく、彼はただ千瀬を試しに来ただけなのだ。──どんな窮地に立たされても、わたしを手放さずにいられるかどうかを。