【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「俺は先代にHTDの副総長として指名された。
それは万智も同じだったけど……万智との会話はいつも取引みたいで、本当に俺を必要としてるのか、試してみたかったんだよ」
「……お前、馬鹿なんじゃねえのか」
「………」
「お前頭いいだろ。
……逆に、どうして俺らがお前のこと必要としてないと思い込んでんだよ。マジで馬鹿じゃねえのか」
そう言う万智に、思わず笑ってしまう。
わたしが"まーくん"の事実を知ってうっかり千瀬に言ってしまったあの後、わたしはミケに連絡した。そこで今回のことを知らされて、確実に千瀬がわたしを手放すことはないだろうと安心したわたしは。
「……ごめん、万智。
俺さ、昔から誰かのこと信じるとか得意じゃなくて」
それでも友だちでいたいと、ミケに言った。
ミケはうんと頷いてくれたし、事実がわかった後も、ミケとは何度か話をした。あの後行われたお見合いも、すごくいい雰囲気でお話して終わったし。
「ミケ……さみしいんだって」
「ちょっと、莉胡ちゃ、」
「学校でもひとり目立つ存在で、一目置かれててさみしいんだって。
……だから、そこも、ちゃんとわかってあげて」
先に全部言ってしまえば困った顔をするミケと、仕方ねえなって顔をする万智。
あの頃のまーくんとはずいぶん印象がかけ離れたように見えるけれど、すごくかっこよくなったと思う。
「ミケ。お前はちゃんとHTDにとって大事な存在だろ。
俺はお前と同じように先代に指名された時に、とっくに仲間だと思って話してたぞ」
「……、万智、」
「裏切ったところで連れ戻すだけだ。
わかったならもう帰るぞ。……時間の無駄だったな」