【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「っ……いじわる」
「いじわるな俺のこと嫌いじゃないでしょ」
「好き……だいすき」
「はいはい、知ってる」
たまにそうやって冷たいところも好き。
とにかく全部好きで、嫌いなところなんてなくて。倉庫についたら抱きついてもいいかななんて考えてたのに、「変なこと考えてるでしょ」と疑われた。失礼な。
「……あっ、ねえ。
そういえば始業式終わったあと、トモと織春となに話してたの?」
あのときの深刻そうな表情。
それが不意に脳裏に引っかかって尋ねたら、なぜか千瀬は一瞬嫌そうな顔をした。
「……莉胡は知らなくていいよ。
俺たちにしかわかんない話だから」
「……?」
「男同士の話。
……ほら、もう着くよ。一応冷蔵庫に食材入ってたと思うけど、昼飯なんか作れるかな」
「うーん、今日は麺類がいいな」
「麺類? つけ麺とかにする?」
「うんっ。わたしも手伝うね」
思い返せば、この時からすでにおかしかったのに。
どうして、ずっと一緒にいた幼なじみの変化に気づかなかったんだろう。──千瀬はわたしを守るためなら、嘘をつくことさえ厭わないと、知っていたのに。