【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
それを聞いて、ぱちぱちと目を瞬かせる。
それは月霞総長、副総長、幹部の3人も同じだったようで。
「いや、まてまてまて。無理じゃね?
HTDのあたり相当黒い噂あるじゃねーか」
「まあ、HTDは"Heart to the devil"の略で、
日本語訳は"悪魔に心臓を"って意味らしいしな」
「えっHTDってその略なの!?」
なんだそのわかりにくい名前の略……!
しかもそれならHTTDなんじゃないの!?と思ったわたしの思考を完全に読まれたようで、「字面が悪いからひとつ減らしたらしいぞ」と一言。
色々と手抜きだなHTD……!
悪い噂の街なくせにユニークすぎる……!
そして名前からは簡単に想像できないぐらい元の文が長い。
もういっそ「悪魔に心臓を」って名前にした方が楽だったと思うんだけど。なんで英語にしたの。
「でもまあ実際は、多少悪さしてる奴らが多いぐらいだからな。
犯罪行為に走ってたのはいくつか前の代だ」
「……そうなんだ」
「意外とここらと変わんねえよ。
西の幹部もどうせ来てるだろうが、後日改めてくる。……お前、今日誕生日なんだろ」
「……やっぱりHTDってすごく気をつかってくれるわよね」
来る時間もそうだけど、千瀬の誕生日だからってさっさと引き返してくれるらしい。
でもそれなら名前にも気を使って欲しかった。今度からHTDって聞いたら、絶対笑っちゃうもの。
「……そのあたりはいいけど。
莉胡を迎えに来るっていうメッセージと、日付けのメッセージ。あいつらの時だけは本気で手ぇ出したの、どう責任とってくれんの?」
「……ああ、それなら実際に実行したヤツらが全員謝罪に行ってる。
ここに来る前にお前にそれが知れたらまずいからな。口止めしてあったが、円満に終わってるぞ」