【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「莉胡からのプレゼントは香水だったよ」
「へえ。香水ねえ」
アルくんになぜかにやにやされて、「なに?」と問いかけてみる。
それを後悔するのは、すぐあとのことで。アルくんがこの笑みを見せる時は大体ロクなことじゃないのに、どうして聞き返したんだろうわたし。
「なんか、自分のお気に入りの匂いつけさせんのってさ~。
独占してるみたいでやらしいなと思って~?」
「っ、別にそういうつもりじゃないから……!
っていうか渡した時に千瀬がちょっと微妙な反応したのってもしかしてそれなの!?」
「ああ……うん。まあ。
どうせ莉胡のことだからそんなこと考えてないんだろうと思って普通に受け取ったけど、深読みしたよね」
だからか……っ!
道理で「深読みしていいの?」なんて聞いてきたわけだ……! そんな下心はないのに……!
「俺も、
莉胡の来年の誕生日プレゼントは香水にしようかな」
「え、なんのために……?」
「マーキング。 ……なんなら、」
俺と同じ匂いにしようか?と。
耳元で甘い声で囁かれたせいで、せっかく立ち上がったのに腰が砕けそうになる。絶対下心があるのはちーくんの方じゃないか。
「……まあいいか。
ああそうだ、悪いけどケーキ準備してもらっていい?俺が食わないとほかのヤツ食えないじゃんそれ。姫がケーキ食べたいらしいからさ」
「わたしが食い意地はってるみたいな言い方しないで」
むすっとくちびるを尖らせたらそれにキスされて、もう千瀬の甘さが止まらない。
ただちに七星から佐藤か加藤に名前を変えるべきだと思う。……なんなら安直に、砂糖か加糖っていう漢字でもいいけど。