【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



「ほんとどこでもイチャイチャしてんなお前ら。

つーか千瀬、お前さっきのこと言っとかなくていいのかよ」



「ああうん。

……HTDと累、敷地合併することになるから」



「合併? ……お前が言ったのか?」



「ううん、向こう。

幹部同士でちゃんと話するけど、ついに関東一帯がひとつになると思っといてくれていいから」



その言葉で、歓声が上がる。

まさか千瀬も、自分の代で関東統一することになるとは思わなかっただろうけど。──わたしをスパイにしてでも十色がやりたかった統一を、千瀬は呆気なく実現した。



「十色さん無念だろーな。

お前に莉胡のことも取られて、関東統一も実現して」



ミヤケは完全に嫌味で言ったんだと思うけど。

そうだね、とにっこり微笑むあたり、相変わらず千瀬は性格がよろしくない。……でもそこも好きなんだから、重症にも程がある。




「じゃあロウソクつけますよー」



17本のロウソクに火が灯ると、倉庫内の電気が消えた。

ハッピーバースデーを歌うのかと思いきや、「消すよ」と千瀬がロウソクを吹き消すだけで。すべて消えた瞬間に、割れるような拍手と歓声。



電気がついてその眩しさに目をぱちぱちと瞬かせていたら、ぽんと頭に手を置かれた。

ん?と顔を上げると千瀬が優しく微笑んでくれて。



「莉胡がこうやって俺の隣にいてくれるのも、今回の関東統一も。

……俺の予想外のところで叶ったりしてるから、正直俺の中でもまだ頭が追いついてないこともあるけど」



倉庫内のみんなが、千瀬の話に耳を傾ける。

いつも賑やかなその空間が。そうやって千瀬のために、と動いてくれるのを見ると、わたしは幼なじみや彼女でしかないけれど、やっぱり感慨深い。



「……俺を7代目にしてくれてありがとう」



千瀬の感謝の言葉に。

なんだかしみじみとしてしまうのは、きっと。──誰もがずっと、口には出さなくともひそかに抱えていた気持ちがあるからなんだろう。



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