【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
──彼を7代目に指名したのは、織春と十色だった。
だからそこに本人の意思は関係なく。歴代の幹部たちも先代の指名制で決まってきたけれど、特に千瀬は、月霞から一度離れた人間だったから。
本当は7代目なんて望んでなかったと思う。
特攻服を渡された時、わたしの名前が入っていなかったら、きっと彼はその地位を手放していた。……だから。
「……、なんで莉胡が泣いてんの」
「っ、だって、」
安心した。
千瀬が7代目になってよかったって、自分で心から思ってくれてることをちゃんと実感して、すごく安心したの。その特攻服を着てくれる人が、千瀬でよかった。
「泣かないでよ。
……俺莉胡に泣かれるの苦手なんだから」
指で涙をぬぐってくれる千瀬に、「嬉し涙なの」と伝える。
それから、「おめでとう」と笑ってみせた。
「ん。……ありがと」
「ほら、ケーキ食べよう?
せっかくロウソク吹き消したんだから、はやく食べてあげて」
「……結局自分が食べたいだけじゃないの?」
東西で幹部が増えたから、ケーキは一応ふたつある。
とりあえず千瀬の名前のプレートが乗った方は月霞の分らしいから6つに切り分けようとしていたら、それを見ていた千瀬がわたしの手に手を添えた。
「莉胡6等分とかできなさそう」
「失礼な……
とりあえず半分に切って、斜めに2回切ればわけられるじゃない」
「うん。でも莉胡が切ろうとしてるところだと明らかにフルーツの量ばらばらになるよね。
たぶんこっち切った方がいいと思うけど」