【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
しれっと指差して言う千瀬。
……たしかにそうだ。千瀬が言うそっちで切り分けた方が、たぶん均一になる。
「千瀬細かい……それなら千瀬が切ってよ」
「結局俺に切らせるんじゃん」
仕方ないな、と結局は切り分けてくれる千瀬。
もはや誰の誕生日なのかはわからないけれど、まあいいやと思っていたら。最後のふたつのケーキだけ、なぜか切り方を変えた千瀬。
「……? なんで切り方変えたの?」
「俺そんなに甘いもん好きじゃないから。
そっちの量が多い方は莉胡にあげるよ」
とん、とお皿に乗せられるのはひとつだけ他のよりも大きなケーキ。
食い意地張ってる、というのを目に見えるようにして言われたような気がしなくもないけど、ありがとうと素直に受け取った。
「……って、そうじゃなくて。
とりあえず千瀬が食べなきゃ意味ないでしょ?」
「俺に切らせたのは莉胡じゃん」
「だって千瀬器用なんだもん」
むっとしつつケーキを一度置いて、代わりに千瀬のケーキを取れば彼がそれを視線で追う。
フォークで一口サイズに切って「あーん」と差し出したら、嫌そうな顔をされた。……そんな顔しなくてもいいじゃないの。
「別に莉胡に食べさせられるのはいいけど。
……なんでお前らきっちりスマホ向けてんの?それ絶対カメラ向けてるでしょ?」
「カメラじゃなくて動画ですよ〜」
「………」