【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
10.終幕ユーフォリア
【Side Chise】
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「え?また今週もお見合いなの?
相変わらずミケも大変よね。大丈夫?」
「俺は平気だよ。
むしろ彼氏いる莉胡の方が大変じゃない?」
「千瀬は一応そのあたりわかってくれてると思うんだけど……
やっぱりあんまり行ってほしくないみたいなのよね」
「まあ彼氏としてはそうだろうね」
「……なんでのんきに会話してんの?
っていうか、いつから"莉胡"って親しく呼ぶような関係になってるわけ?」
ぐい、と。
仲良さげに話している莉胡と砂渡の間に割り込めば、「相変わらず嫉妬深いんだね」と笑うこの男。実は莉胡のことを好きなんじゃないかって、俺はちょっと疑ってるからね。
HTDが累との合併宣言をしてから、約1ヶ月以上は音沙汰なし。
嘘だったのかと半信半疑になってきたところで莉胡のスマホに連絡があって、日時を決め、今日ようやくHTDとの合併が成立した。
HTDは累の傘下に入ることになって、敷地は正式に西のもの。
けれど東と西の敷地ももう争ってはいないから、関東内で争うことは、暴動でも起きない限りもうないだろう。
そんな中、春と俺と白葉……万智で今後について詳しく話している間に、気づけば幹部室で砂渡と莉胡が仲良く会話していた。
ほんとに、油断できない男だ。
「もう千瀬……
普通に話してるだけなんだから、突っかかってこないで?」
「……だって莉胡が仲良く喋ってるから」
「……はいはい。
ちゃんと千瀬のことだけ好きだから大丈夫」
万智のことで一瞬揺れたあの日から、俺は色々とふっきれたけど。
それは莉胡も同じみたいで、時折こんな風になだめてくる。俺に子ども扱いするなって言うくせに、自分だって俺のこと子ども扱いじゃん。
……まあ、もう夏休み入るし。
夏休みには莉胡と旅行に行くことにもなってるから、これ以上ないぐらいふたりきりの時間を濃密に過ごしてやろうと思ってるけど。