【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「1年前は西と仲良くなることも予想してなかったっつーか。
……お前がもどってくることすら予想してなかったからなー」
「……そんなの全員が思ってることでしょ」
1年前は、莉胡がまだ十色さんを好きなんだと思ってた。
莉胡は春と付き合ってたし、応援しようって何度も思って。……でも結局は、自分の中でずっと宿り続ける気持ちの方が大きくて、止められなくて。
だけど結局は俺の隣にいてくれたりするんだから、ほんとに何が起こるかわからない。
月霞のトップに立つどころか、この場所にもどってくることなんてもう二度とないと、1年半前の白銀の世界で思っていたのに。
「ふふっ、1年前は千瀬くんと付き合ったりもしたなー。
いま思い出すと、ちょっと懐かしいかも」
「……お互い様だとは思うけど、
千瀬がはじめて付き合ったのって由真ちゃんだからわたしちょっと根に持ってるわよ」
「それを言うなら莉胡ちゃんだって、
春くんがはじめて一目惚れした人だよー?」
……ばちばちしてる。なんかばちばちしてる。
仲が良い上に、いまはうまくいってるからこそこうやって過去のネタを気軽に引っ張り出してこれるんだと思うけど。
「心配しなくても俺の最後の彼女は莉胡だよ」
「……俺がこんなに長く付き合ってんのはお前だけだから、いまさら終わったこと気にすんなよ」
俺と春がそれぞれなだめれば、「気にしてないよ」とふたりとも笑顔だ。
……なんていうか、女の子って怖いよね。いまちょっとふたりの裏の顔が見えた気がして仕方ないんだけど。
「あ、そういえば由真ちゃん、いあちゃんと連絡ついた?
夏休み遊びに行こうって言ってたじゃない」
「うん、連絡ついたよー」
「ちょっと待てお前ら……!
由真がいあと仲良いのは知ってんだよ。知り合いだからな。……でも莉胡、なんでお前までいあと仲良くなる必要があるんだよ!?」