【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「ん……、千瀬、」
「……好きだよ」
吐息が離れて、キスの後のなんとも言えないその顔も好きだ。
俺のこと好きって、表情全体で言われてるみたいで、どうしようもないぐらい惹きつけられて離れられない。
「……わたしも、好きだもん」
ちょっと赤くなった頬を撫でてやれば、莉胡はそう言うから。
ちゅ、と小さな音を立ててもう一度キスを落としてから、こつんと額同士を重ねた。
「付き合う前よりも、付き合った頃よりも、ずっと今の方が莉胡のこと好きだよ。
……どんな表情もかわいいって思ってるし。泣き顔だけは、さすがにちょっと苦手だけど」
だけどもし、俺のために泣いてくれるなら。
俺のためにうれし涙を流してくれるなら、きっとそれすらも可愛くて仕方ないと思う。……俺の世界は生まれてからずっと、莉胡だけで染まってる。
俺のために、自分が好きだった人すら裏切った莉胡。
莉胡にとってはどうしようもないぐらいの初恋だったと、痛いほどに実感させられたから。
どうしてあの頃に手を伸ばしてやれなかったんだと、何度も何度も後悔したけど。
いつだって浮かぶのは付き合ってからの莉胡の笑顔で。思いがすれ違って苦しんだ分だけ、隣にいてくれるその嬉しさもありがたみもちゃんとわかる。
「……ずっと俺のこと好きでいて。
俺もずっと……莉胡のこと好きでいるから」
「ふふ……うん。なら、"約束"ね?」
「うん。……約束」
人生で、二度目の約束。
けれど今度は、確実な未来を求めるための約束。さりげなくて、何気ない約束だけれど。
──俺がひそかに永遠の愛を誓ってるってこと。
きっと、莉胡はまだ、知らない。
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【ファントム・ナイトⅡ Fin.】