【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
ぐぐぐとミヤケの足を踏んでいる千瀬。
遠慮なしだからミヤケが涙目だ。可哀想に。
「お前にデリカシーってものはないの?
ほんとよくそんなので彼女に呆れられないな……もし"そう"だったら、莉胡に自分で買いに行かせるわけないでしょ。莉胡が買いに行くのは化粧品」
「は!?
化粧品買いに行くのになんで俺がついてくんだよ!?」
「来た道と薬局は逆側にあってコンビニは薬局の隣。
ついでで行ける距離じゃん。行ってきてよ」
「お前めんどくさがってるだけだろ」
「ばかだなミヤケ。
俺がわざわざ"お前に"頼んでんのに?めんどくさいなんて理由で、大事な莉胡をほかの男と行かせると思う?」
「……あー、莉胡、行くか」
……単純すぎる。
ミヤケには言わないけど、どう考えてもあれはめんどくさかったから彼に押し付けただけだ。完全に、千瀬に良いように利用されてる。
「うん……じゃあ、行ってきます」
「ん。いってらっしゃい」
ひらひらと軽く見送られて、ミヤケと倉庫を出てコンビニと薬局へ向かう。
なに食べるの?と聞いたら、「あー、テキトーじゃね?」といい加減な返事。うん、これでこそミヤケだ。
「ねえねえ、ミヤケ。
わたしあんまりこっちに顔出せてないけど、ハルトと於実は、だいじょうぶそう?」
「なにが大丈夫で、大丈夫じゃねーんだよ。
あいつらが年下だから気にしてんのか?」
気にしてる、というか。……気にしてないって言ったら、嘘なんだけど。
千瀬が就任時に指名した新しい幹部のふたりは、朝馬ハルトと、中津 於実(なかつ おみ)。──ふたりとも6代目にわたしたちが追放される前からいた子たちで、ひとつ年下の、今年高校1年生。