【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「ん?……どうしたの?」
「去年も一緒に来たけど、なんだかんだ付き合ってた織春よりも千瀬といた時間の方が長かったなあって。
……今年もかき氷一緒に食べてくれる?」
「ふたりで来てるからテントとか置いとけないし、海から上がって片付けて着替えてからね。
夕日が沈む頃にのんびり散歩するっていうのも俺は結構好きだし」
「ふふ、ここ夕日が沈むところ綺麗に見えるものね」
体育座りした莉胡が、俺の肩に寄りかかってくる。
潮風を孕んで絡まった髪をそっと解くように撫でて、どちらともなく指先をつなぐと、莉胡が防水ケースに入れたスマホを手に取って。
「……自慢しよう」
絡めた指やら、寄りかかってる感じやら。
あきらかにカップルって感じの雰囲気を晒し出すおしゃれな写真を撮っている莉胡。女の子ってこういうの好きだよね。
「キスしてるとこでも撮る?」
「えっ……
あ、えっと……それは恥ずかしい……でも、」
「でも?」
「顔近づけてキスしてるみたいな……
シルエットの写真撮るのはしたい……かな」
莉胡は、恋愛面に関してすごく女の子らしいと思う。
乙女っていうか、女の子らしさ全開で俺の彼女でいようとしてくれるから、つい流されるっていうか。
「シルエットで、
しかも顔近づけるんだったらキスしても一緒じゃない?」
貸して、と莉胡からスマホを受け取る。
そっとくちびるを重ねてちらりと横に流した視線で確認しながら砂浜にできた影を撮れば、それっぽい写真になった。莉胡もうれしそうだし、それが可愛くてまたキスする。……もう、キス魔なのは許して。