【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
新商品らしいティラミス風のかき氷を、約束通り半分こで食べて。
来るときに千秋に寄り道してもらって買ってきたスーパーの食材で、つくるのは冷製パスタ。お互いの動きを把握しているから、莉胡となら手際よく作れて楽だ。
「デザートはゼリーね」
「作ってくれるのかと思ったら市販なのね」
「いいじゃんたまには。
俺はゼリーと向き合ってる時間よりも、莉胡と向き合ってる時間が欲しいって思っただけだよ」
「すぐそうやって口説くからずるい」
かき氷も、作った冷製パスタなんかも莉胡は写真におさめていたから、今日は莉胡の画像フォルダに新しい画像が山ほど増えたことだろう。
……ぜんぶ俺との思い出だって莉胡に言われたら、撮らなくていいよなんて言えないし。
写真撮るのがうまいから、おしゃれな雑誌の写真みたいなのもあるし。
まあ莉胡が楽しんでるならそれでいいか、とご機嫌な莉胡に「お風呂入っといでよ」と声をかける。
「うん、はいってくる。
……上がったら、髪乾かしてね?」
「はいはい、わかったよ。
乾かしてあげるから、入っておいで」
別荘の寝室は、一応、というか恋人用ではないから個室はそれぞれあった。
だけど別荘なだけあってベッドはどれもサイズがダブルだし、俺らが使ってない部屋がまだほかにもある。
「……、今日だけね」
自分に言い聞かせるようにしてつぶやくと、荷物を置いた部屋にもどってバッグの中からピンク色のショップの袋を取り出す。
それを広間のテーブルに置いて、髪を乾かす約束の前に、と入れ替わりでお風呂に入っていたら。
「っ、ねえ千瀬……!」
早速俺からのメッセージに気づいたらしい莉胡が、駆け寄ってきたようでドア越しに話しかけてくる。
普段なら俺が入浴中にそんなことは絶対しないのに、わざわざ来たってことは喜んでくれた証拠。