【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
ハルトも於実もしっかりしてるから、不安はない。
だけどやっぱりひとつ年下ということもあって、千瀬、ミヤケ、千音の3人に多少気をつかってるのがわかる。
「たしかにあいつら多少気ぃつかってるけどよ。
ぶっちゃけ月霞の下っ端がいちばん気ぃ使ってんの、俺ら幹部じゃなくてお前だと思うぞ」
「……え、」
「だって考えてもみろよ。
俺らはただの幹部だけど、お前トップの女だぞ。下手すりゃお前の言葉ひとつでトップの人間が動くんだから、そりゃ気も使うだろーが」
ああ、そっか。……そうよね。
わたしが月霞に来たあの瞬間から、わたしは常にトップの隣にいる女。──昔からずっと、気を遣われてきた。
「どうしたら……
みんなに普通に接してもらえると思う?」
姫だなんてそんな名前、重要視してくれなくていいのに。
わたしはただ千瀬が好きで、千瀬が月霞7代目という肩書きを持ってるだけ。
「あー、諦めればいいんじゃね?」
「あなたに聞いたのが間違いだった」
「冗談だっつの。
でもまあ、お前と千瀬がいなかったあの半年の間に、結構人数増えてんだろ? だからそういう新しいヤツらとひとまず仲良くなってみればいーんじゃね?」
「……千瀬が勝手に下行くなって言うんだもの」
「それはあいつがただ単にほかの男んとこ行かせたくねーだけだろ。
んじゃあ、ハルトやら於実やら、あと2階に入れる幹部候補やらとひとまず仲良くなってみろよ」
ミヤケは。
いつも明るいし場を盛り上げてくれるから散々みんなにもいじられてるけど、本当はすごく鋭くて、まわりのことをちゃんと見てる。
……そうじゃなきゃ。
いくら仲良くても、千瀬は副総長に指名してない。