【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
シーツの波に広がる黒い髪。
何度もキスを落として、白い肌が俺の独占欲と熱で徐々に赤く染まっていくのを見ながら、指を滑らせる。
「あっ…、」
濡れたくちびるから漏れる艶のある声。
その表情がわかりやすく熱に沈んでいくと、限界の糸が切れてしまわないように俺ときつく指を絡める莉胡。……そんな足掻きも呆気ないほどすぐに、限界に落ちるのに。
「っ、ちせ……」
「ふ。……もうだめ?」
「だめ、っ…、」
びくっと震える莉胡の身体を抱き寄せる。
本能のままに俺を求めて、しがみついてくるその様子もたまらなく愛おしい。……俺のことを、莉胡が欲しがってる。
俺以外の誰も知らない乱れた姿。
ぜんぶが色っぽく見えて、めちゃくちゃ美味しそう。
「そんなかわいい顔。
……絶対ほかのヤツに見せないでよ」
「こ、んなこと、千瀬としか、しないもん」
「こんなことって?」
「いじわる……」
せっかくの時間なのにムードもない。
いや……俺があえてそういうムードにしたくないっていうのもあるのか。甘ったるく息を吐くだけの時間を莉胡と過ごすのは、さすがに幼なじみだった頃の記憶が邪魔をして、お互いの中で羞恥に変わる。
俺らだからこそ、こんな風に。
ときどきふざけた会話でもしてないと、何もかも捨てきれないから。……そのふざけた会話も、割と糖度高めだけど。