【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



どうして?と駆け寄ってくる千瀬を見つめれば、彼はわたしの全体を見てから「よかった」とほっとしたような表情を見せるから。

嫌な予感が、確証に、変わっていく。



「……千瀬、あの、」



「ちょっと待って、莉胡その手どしたの」



ミヤケが手を離してくれて、自由な両手。

そのうちシートに触れた方の手を千瀬につかまれて簡単に事情を説明したら、彼がくっと眉間を寄せた。



「好奇心旺盛すぎだろほんとに。

……チッ。でもまあミヤケと行かせて正解だった」



「お前に連絡してねーのにここまで来たっつーことは、」



「西の傘下の人間から、

例の"新しいシステム"で連絡が来た」




新しいシステム……?

なにそれ、と首をかしげていたら、「とりあえず倉庫にもどるよ」と千瀬に手を引かれた。



「早いうちに羽泉とトモがシステムちゃんと通るように調整しといてくれて助かったよ。

まあ今回はミヤケがちゃんと連れて帰ってきてくれてただろうけど」



「ったりめーだろ。

お前の女を俺が傷つけるわけねーだろーが」



早足で倉庫へ連れ戻されて、「手洗っておいで」と言われて一度手を洗いにいく。

洗えばすぐに落ちたけれど、どうしてか脳裏に強く印象が残って、どうしようもない。



「莉胡さん? 大丈夫ですか?」



「於実……うん、平気。

手洗うだけなんだから、心配しなくてもいいのに」



「総長に頼まれたんです」と苦笑いする於実と、手を拭いてから幹部室にもどる。

そこにミヤケの姿はなくて思わず尋ねたら、下の子を何人か連れて、さっきのコンビニ付近へ行ったと言われた。



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