【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
ピコンピコンと緊急事態を彷彿させる音が鳴ったかと思うと、液晶の画面がぱちっと切り替わる。
表示されるのはどこかの地図。音声だけは途切れていないようだけど。
『はあ?こんなの遠くて行けねえっつの、』
『こっちから行かせる。
千咲、アルト、お前ら下のヤツら多めに連れてけ』
そう言った織春の後ろから、ふたり分の返事。
そして用心しろよという織春の言葉に思わず千瀬を見れば、彼はわたしのそばに歩み寄ってきて抱きしめるような形で、ぽんぽんとあやすように背中を叩いてくれる。
『んじゃ俺の方は切るわ』
「りょーかい。ありがとう」
千瀬に続いて織春も了解の返事をすると、青ランプが消える。
ミヤケが切ったことで画面が消えて真っ暗になると、何事もなかったかのようにそこには佇む機械だけ。
「千瀬……わたしの、せいで、」
「……ちがうよ莉胡。
たしかに相手は莉胡の名前を出してるけど、悪いのは莉胡じゃない」
「でも、」
大丈夫だとしばらくなだめられて、徐々に落ち着いてくる。
そのまま彼の胸に顔をうずめていたら、千瀬が「莉胡」と優しく名前を呼んでくれた。
「莉胡は俺が守るよ。
……何があっても、絶対に」
「千瀬、」
「守れない女の名前を入れた特攻服なんて俺は着ない。
……だから俺のこと信じて、莉胡」