【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「わたし……千瀬に、傷ついて欲しくないの。
精神的ダメージを負って欲しくない」
「……渡すつもりはないって言ってるでしょ」
「でも向こうは千瀬がそう言えば、きっと強行突破しようとするでしょ……?
そしたら……精神的なダメージはなくても、肉体的にダメージを負うかもしれないじゃない」
「……まあ喧嘩したらそうなるけども」
「嫌なの……、
どっちも、傷つけて欲しくないの……」
俺の服を握る莉胡の手が、震えてる。
傷ついて欲しくないと言いながら。……そうやって一番傷ついてるのは、莉胡なのに。
心配しなくていいよと言ったところで、心優しいこの子はきっと納得してくれない。
確実に無事だという保証があるまでは、引き下がらないのが莉胡だ。
「……わかった。
無理はしないし自分のこともちゃんと守るようにするよ」
「……うん」
「だけどやっぱり……
莉胡をいちばんに守るのだけは、譲れない」
莉胡がわずかに顔を上げて目元だけを見せてくれるけど、瞳にはじわりと涙が浮かんでいて。
譲れないよと念を押せば、しばらく考え込むように黙り込んだあと、小さくうなずいてくれた。
「……ん。うなずいたんなら、もうそんな顔しないで。
顔上げてくれないとキスできないよ」
「……千瀬、」
「ん?」