【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「……そんなに莉胡が悩まなくてもいいのに」
そのまましばらく過ごして、どちらともなくくちびるを離したあと。
莉胡を抱きしめてぽつぽつと会話していたら、ちょっと眠くなってしまったらしい。
いまは、ベッドに背を預けている俺の胸にすっかり寄りかかって眠っている莉胡。
完全に莉胡の中から消え去らない不安にため息をこぼして、莉胡を起こさないように手を伸ばすと、テーブルに置いていたスマホを手に取る。
莉胡の中の不安をさらに煽らないように、あえて帰ってきてからはスマホに触れなかった。
だけど案の定色んなところから連絡は来ていて、いまになって十色さんのことをちょっとだけ尊敬する。
東のトップに立つってことは。
……思った以上に、簡単じゃない。
「……あれから機械に反応はなし、か」
東西ともの幹部室に設置した、あの機械。
東西の傘下まですべての人間が、なにか緊急事態に陥った場合、アプリを通してワンタッチで居場所をあの機械に送信できるようにした。緊急用のGPSのようなものだ。
そして、俺たち東西の幹部は自分のスマホであの機械を通して東西に連絡できる。
それが、ミヤケと、アルトと千咲がスマホで映像とともに連絡してきたシステム。それを受けた東西の幹部室では、スイッチを入れたら音声を飛ばせるようになってる。
実際に何かあった場所と、東西の幹部室と。
その3箇所で連絡を取れるようにした新しいシステムだ。
俺が7代目になる前からそのシステムをつくる話はしていて、春休みにそれを設置した。
……まさかこんなにも早く使うことになるとは思わなかったけど。
一通り連絡に目を通していたら、不意にスマホが震えて。
相手が春ってことは、向こうも由真は送り届けたのかとぼんやり考えながら電話に出る。
「ごめん全然連絡返せてなくて。
……なにか、あった?」
『……いや。
由真はもう送り届けたから、いま西は幹部全員揃ってる。ミヤケに連絡したらそっちもお前以外は全員揃ってるんだと。……いま話せそうか?』
もちろんそれは、莉胡は?という意味で。
まだしばらく起きそうにない腕の中の莉胡を一瞥してから、「いまは大丈夫だよ」と返す。