【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
そうすれば俺の声をスピーカーにして通したのか、東の幹部の声も聞こえるようになる。
話しづらいだろうし申し訳ないなと思っていれば、「莉胡どーだよ」と聞いてくるのはミヤケで。
「……悩まなくてもいいって言ってるけど、
やっぱり気にしてるみたいで浮かない顔のまま」
『そーだろーな。
……んで?莉胡といま一緒じゃねーの?』
「一緒にいるけど、いまは寝てる」
そう言って「それで、」と話を促せば、今度聞こえてくるのは淡々とした羽泉の声。
どうやらHTDに動きがあったようで、2件の事件を起こしたのも書き置きを置いたのも、本人たちに間違いないらしい。
莉胡に聞かれた、始業式後の織春とトモの会話。
あれはHTDに不審な動きがあることを、情報屋をやめたあとも仲間だったりそれなりの情報が入ってくるらしいトモから、東西に報告を受けていた。
だから莉胡にごまかしたのに、相手が動くのが早すぎた。
「……俺さ、
ずっと引っかかってることあるんだけど」
『……どうした?』
「敵の目的が、俺を傷つけることなのか莉胡を奪うことなのかわからないんだよね」
もし莉胡を奪うなら、別にそれは俺の誕生日じゃなくてもいい。
むしろ今日にでも敵襲を受ければ、俺らは準備ができていないまま。明らかにHTDの方が有利だ。
それに莉胡を奪うのが目的なら、わざわざ莉胡のせいで仲間が傷ついているような演出をするような必要もない。
……そう考えたら、やっぱり俺を傷つけることが第一の目的ってこと?
「俺もまだ7代目になって、1ヶ月ぐらいしか経ってないじゃん。
……だからそのあたり、かなり曖昧なんだよね。莉胡が6代目と関わってたことを外部の人間はほとんど知らないけど、もし万が一知ってるなら7代目とは関連がないかもしれない」
俺らの"追放"を、何らかの形で知っていた人物かもしれないし。
目的を一度考え出せば、キリがないほどに可能性が浮かんでくる。