【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「これは俺と乃詠しか知らない話だけどね。
HTDの動きが活発だったから、一瞬暴走もやめようかと思ったんだよ。結局何もしてこなかったけど、そのあたりから少しずつHTDは水面下で何かしてる」
「……その理由に予想はついてるんですか?」
「はっきりとは言えないけど……
まあ、莉胡が絡んでるのは間違いないだろうね」
やっぱり、莉胡が関わってる。
それをしっかり頭の中に置きながら1つファイルを取り出してめくれば、中身は膨大な量の人物データ。何となく見当はついてるけど尋ねてみれば、やっぱりHTDのメンバーらしい。
『HTDの人物データ……?
そんなのどれだけ探しても絶対出てこないですよ。なんで、』
なんで十色さんが持ってる?
おそらくトモはそう言いたいんだろう。それをちゃんと汲んだ彼は、小さく微笑んだ。
この笑みは、俺もよく知ってる。
──絶対に、何か知ってるときの笑みだ。
「月霞と累ができた時、関東には確かにほかに細かい暴走族はあった。
だけど、勢力上その両方を上回る暴走族はいなかったんだよ」
「……そうですね、」
関東二大は、それぞれ細かいチームをかき集めて大きな勢力にしたもの。
だから月霞と累よりも大きな組織はいない。
「でも本当は、東の方が圧倒的に大きかったんだよ。
……千瀬。奪い合われた初代の姫は、どっちが勝ち取ったんだった?」
「……東、ですね」
当時奪い合われた彼女は今や俺の義理の姉貴。
東西の勝負に、ちゃんと結果はついていた。──そしてそれに比例するように、敷地も、東の方が大きかったらしい。
「そう。
だけど今や、関東の東西はほぼ同じ大きさの敷地しかない。……どういうことかわかる?」