【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



そこまで言われれば、よっぽど鈍くない限りわかる。

つまりHTDは……元々、月霞の一部だったってことだ。



「そのHTDの資料は、HTDがまだ月霞だった頃。

……月霞を裏切ってない頃のメンバーに、千秋さんが圧力をかけて現在のメンバーの情報を強制的に回収させたもの」



「え、」



「この資料の持ち主は俺じゃなくて千秋さん。

……あの人も初代だからね。それなりに情報は持ってて、かなり前から動いてくれてたみたいだよ」



それなら俺に直接連絡してくれればいいのに、と思ったけど。

千秋の中にも、ある程度確信の持てない情報なんかがあったんだろう。



「まあ、残念ながら俺も千秋さんも。

……こうやって動いてんのは莉胡のためだけど」



それはわかってる。

ただの7代目に力を貸してくれてるわけじゃない。──7代目の姫が、莉胡だから。




「それで……十分です」



俺が守りたいのは莉胡だけで。

だからといって、千秋がつくって十色さんから受け継いだ月霞を容易に手放す気もない。──7代目として、月霞も姫も、ちゃんと守る。



「愛されてるね、お姫様」



「………」



「で、莉胡はいつまで寝たふりしてんの」



ぴく、と。

十色さんの言葉で腕の中にいた莉胡が肩を揺らしたことに気づいて「起きてんの?」と聞けば、莉胡がもぞもぞと動いて顔を隠した。……起きてんじゃん。



「起きるタイミング見失っちゃったからずっと寝たふりしてたのに……

なんでそうやって十色はすぐにばらしちゃうの」



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