【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「俺が来た時はすでに起きてたし、ただ単にそうやって千瀬に甘えてるんだと思ってたんだよ。
途中で寝たふりだって気づいたけど、だいぶ前から話聞いてたでしょ」
「な、んで最初から気づいて、」
「だって千瀬に引っ付いてられるからうれしそうな顔してたじゃん。
莉胡の寝顔ぐらい俺も知ってるから、あきらかに寝顔じゃないのわかるし」
「っ……
別にそんなうれしそうな顔なんてしてない、」
「自覚ないのってほんとタチ悪いと思わない?」
「ッ、十色が余計なこと言うから……!
千瀬とふたりきりだったんだから引っ付いててもいいじゃない……起きたら抱きしめたままでいてくれたんだもの、」
離れたくなかっただけなのっ、と。
思わず口角が上がりそうなほどにはノロけてくれる莉胡の髪を撫でてやるけど。……やっぱり意地悪したくもなるんだよね。
「莉胡。
……いま東西の幹部と電話中だって知ってる?」
「え?」
ぽかんとした莉胡が、次の瞬間一気に顔を赤く染める。
それから羞恥で言葉も出てこないのか、俺の胸に顔をうずめて黙り込んでしまった。
「ふは、莉胡完全にいま忘れて口走ってたよね。
好きになるとそうやって盲目になる莉胡のこと俺は結構好きだよ」
「……十色さん」
「そんな睨まないでよ千瀬。
別に莉胡のこと取ろうなんて思ってないし」
ほら、と彼が見せた右手の薬指。
そこにはシルバーのリングがはまっていて、言われなくても例の彼女とお揃いだってことはわかる。