【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「……ちあちゃんもそうだったの?」
「そうよ〜。
蜜香ちゃんも莉胡ちゃんも、どっちも一途だから。好きでいてくれるって安心しすぎなの」
これでもきっと、千瀬は構ってくれてる方だ。
朝はかかさず迎えに来てくれるし、倉庫にしか行かないけど土日は一緒にいてくれるし、勝手に部屋に遊びに行っても怒らずに入れてくれるし。
あんな風に別のことをやっている彼に甘えてみたりしても、あんまり嫌そうな顔をされたことはない。
……でもわたしは、千瀬にもっと構って欲しいわけで。
「莉胡ちゃんスキンシップとるの好き?」
「え、っと……うん……
抱きついたりするのは、結構好きかな……」
千瀬のぬくもりも匂いも安心する。
わたしの好きな彼の声が頭上から聴こえるのも好きで。抱きついたままでその声を聴くことができるのは、わたしだけの特権で。
「それじゃあ、しばらくそれをやめてみたら?
……案外、求められなくなるともどかしくなるものよ?」
「……わたしの方がさみしくなっちゃう」
「ふふっ。莉胡ちゃんらしい」
1日1回は、抱きついてないと気が済まないのに。
しばらく何もしないなんて我慢できるのかな、と思いながらも、やっぱりさみしい分、彼の気持ちが欲しい気持ちが勝ってしまう。
「……でも、ちょっとがんばってみる」
「ふふ、がんばって。
……あっ、ねえ莉胡ちゃん、つかって申し訳ないんだけど、ミネラルウォーター切らしちゃったからそこのコンビニまで買ってきてもらってもいい?」
千瀬がお風呂上りに飲んでるのはいつもミネラルウォーターだ。
なかったらたぶん困るだろうし。コンビニまですぐそこだから、と申し訳なさそうな千瀬ママに首を横に振って、「行ってくるね」と七星家を出る。