【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
ひとりでコンビニに行ったら、千瀬に怒られるかな。
一瞬そう思ったけれど、悪いのは千瀬よ、なんて理不尽な八つ当たりをしてみる。怒られたら謝るのはわたしなのに、とりあえず八つ当たり。
けれど特に何も起こることなく、目的のミネラルウォーターを買い終えてコンビニを出たとき。
すみません、と綺麗な人に声をかけられた。
中性的な顔立ちをしているけれど、男の人。
声は高めだったから女の人かと思ったけれど、じっと見れば男の人だとわかる。
まさか、HTDの人じゃないわよね?
「……このあたり、ちょっと慣れなくて。
駅までの道のりを、教えてもらえませんか?」
「あ、えっと、」
心の中で"疑ってごめんなさい"、と謝っておく。
駅まではすぐそこだけれどこの場からは見えにくいため、「案内しますね」と隣に並んだ。
「すみません、わざわざ。
すごくお綺麗な人だなって思ってたんです」
「いや、そんなこと……
むしろわたしも声かけられた時に、綺麗な方だなって思ってました。男性なのにすみません」
「ふふっ、大丈夫ですよ。
制服ってことは、高校生ですよね」
やわらかな笑みを浮かべるその人は、とても落ち着いた雰囲気で。
よくよく見れば彼が着ているのは有名な進学校の制服で、話をすれば同い年だとわかった。
「えっ……
年上だと思ったのに同い年……」
「それはお互いさまだよ。
制服着てなかったら、絶対高校生だと思わなかっただろうし」
くすくすと笑う彼と、話していたら楽しくて。
駅に着いてもなぜか自然と会話を続けたままで、どれぐらい話していたんだろうか。