【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
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「……最悪すぎる、」
翌朝、ベッドの中で。
前日なかなか眠れなかったのにいつもならまだ眠っている時間に目が覚めたのは、あまりにも暑かったせい。……というのももちろん季節が春の今、厚着しているわけでもないのに暑いなんて感じるわけもなく。
「あら、可哀想に。熱ね」
「……お母さん」
「千瀬くんに連絡した?
まだなら、うちに来たときに伝えるわよ」
「……そうして。
お見舞いは、来なくていいからって伝言も」
体温計をつかってはかれば、見事な高熱。
身体がだるいし、目を開けているのもつらくなってくる。朝ごはんどうする?と尋ねられたけれど、食欲もなくて。
「次起きたら食べる……」
「いいけど、今日七星ママとランチ行くのよ。
起きたときに誰もいなくてもちゃんと作れる?」
「……うん、」
大丈夫だよ、と。
言えばお母さんは「わかった」と一通り看病の支度をしてくれて、静かになった部屋でぼーっと天井を見上げる。
「……、」
ミケと別れて帰ったあと、あきらかに泣き腫らした目をしていたわたしにお母さんは何も言わなくて。
いつも通りに接してくれていたけれど、ご飯とお風呂を済ませてから部屋にもどってひとりになれば、やっぱり涙もあふれてくるわけで。
枕に顔をうずめてしばらく泣いていたら、時間は深夜になっていた。
最後に見た時間が2時半だったのは覚えているけれど、そのあとは泣き疲れて寝てしまったから、実際に何時に寝たのかまでは覚えてない。