【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
きっとめんどくさいって思うと思う。
だけど莉胡だから仕方ないなって、許せるぐらいわたしにハマってほしいの。
器用な愛し方じゃなくていい。
道に迷ったら、どっちの方向に行けばいいのか、ちゃんと聞いてくれればそれでいいの。こうして欲しいって、わたしはちゃんと答えるから。
不器用でも愛してくれるのなら、それで構わない。
「無理してわからないことしなくていいから。
……器用にがんばらなくていいよ」
不器用なところを見せるのだって、本心を告げるのと同じくらい勇気がいると思うけど。
幼なじみだもん。……不器用なことは、もう知ってるの。
「不器用だからって、嫌いになったりしないから」
絡めあった指を持ち上げて、千瀬の手の甲にくちびるを落とす。
それから見上げた千瀬の表情は困ったようで、どこか泣きそうなのに、ものすごく愛おしい。
「……ほんと、莉胡には敵わないんだけど。
そんな風に思ってたわけじゃないのにすごく楽になったから、内心そういうとこあったんだと思う」
「……さすが幼なじみでしょ?」
「ふっ……そうだね。
とりあえず俺さ……本能優先して言うと、いま莉胡にめちゃくちゃキスしたいんだけど、していい?」
「……、心臓が、」
だめだ、本能に従われたらきっとわたしの心臓がもたない。
……いやでも、そうしてくれれば千瀬はそんなに苦しまなくて済むんだから、わたしが我慢すればいいのよね。
「莉胡……かわいい。
いっぱいキスするから、ちゃんと俺だけ見てて」
っ、だめだやっぱり心臓がもたない……!
不器用さを表に出してくれてるはずなのに、どうしてセリフが甘くなるの!?わざとなの!? わたしをこれ以上好きにさせて一体どうするつもりなの……!