【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「……千瀬あったかい」
空いている方の手でわたしの身体を抱き寄せてくれる彼の首筋に顔を寄せて、目を閉じる。
やっぱり千瀬にこうやって抱きしめてもらっている時間が、いちばんしあわせ。
「莉胡も熱あるから体温高いよ」
「でもいま下で薬飲んできたから……
もうちょっと経てば下がるわよ」
「ん」
顔をうずめたすぐそばで、おそろいのネックレスが小さく音を立てて揺れる。
チェーンに指を引っ掛けて、ネックレストップの三日月に触れた。その隣のペアリングはもちろん千瀬のサイズに合わせたもので、わたしよりも大きいそのリングに指を通して遊んでいたら、「こら」と怒られる。
でももちろん、彼が怒っているわけもない。
顔を合わせたらどちらともなく笑えてしまって、ちゅ、と触れるだけのキス。
「もう……
千瀬とイチャイチャしてたら、寝たくなくなっちゃう……」
「ふ、奇遇だね。
……俺も莉胡のこと寝かせたくない」
「っ、!」
寝かせたくない、って……!
それはちょっと……と顔を赤くしたわたしをじっと見てから、意地悪な表情で「なに考えてんの?」なんて余裕げに聞いてくる千瀬。意地悪すぎる。
「ふたりきりだもん。
……ちょっと想像したっていいじゃない」
「……そういうこと言われたら俺だって我慢したくなくなるんだって」
「……え?」