【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
なんて言ったの?と。
千瀬に聞いたら、なぜか「さっさと寝ろ」と強引に顔を胸に押し付けられた。さっきまで寝かせたくないって言ってたじゃないの。矛盾してるわよ。
「元気になったら教えてあげる。
だから、さっさと寝ればいいんだよ」
「む……、わかったわよ」
絶対教えてね、と言えば意味深に微笑まれた。
その笑みが怖いよ、ちーくん。
「……そういえば莉胡」
「うん……?」
寝ろと言ったから目を閉じたのに話しかけてくる千瀬に、声だけで返事する。
耳に触れるやわらかい千瀬の吐息。聞こえるほんのわずかな息遣いすらも、とくん、とわたしの鼓動を刺激した。
「昨日一緒にいた男、誰だったの。
……仲良さげに話してたけど」
「ん、……ミケのこと?」
「………」
「砂渡ミケ……、
すごくおしゃれな名前よね」
「……莉胡」
「なぁに……?」
「あの男ともう二度と関わんないで。
会うことはもうないかもしれないけど。……あの男、」