【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
言えば、「は!?」と目を見張るミヤケ。
相手の行動が早すぎてさすがに驚くか、と思っていたら、どうやらミヤケの怒りに触れたのはそこじゃなかったらしく。
「おっ前、"接触してた"ってどういうことだよ!?
あいつのことひとりで外出させたのか!?」
「………」
「おい千瀬、」
「……ごめん」
わざわざ昨日、ミヤケは莉胡のためを思って、倉庫から家まで一緒に送ってくれた。
今回は何もなかったからよかったものの、もしこれで何か起きていたとしたら、本当に謝るどころじゃ済まない。
「俺が迂闊だった」と付け足してもう一度ごめんと謝れば、はあ、とため息を吐き出すミヤケ。
それから、「んで?」と続きを促してくる。……ここは、素直に答えておいた方がいいんだろう。
「俺が見たのは、莉胡がその男と話してたとこだけ。
……男の顔は見たけど名前は知らなかったから、まさか副総長だったことまで気づかなくて」
もし、知っていたら。
俺は絶対、莉胡をあの場に置いて帰ったりしなかった。──本当に、俺がとんでもなく迂闊だった。
心底、無事でいてくれてよかったと思う。
噂に聞くHTDの関係者なら遠慮なくあのまま莉胡を誘拐していたかもしれないと思うだけで、いまさら背筋が冷える。
なにを考えて接触したのか。はたまた偶然知っただけなのか。
それは知らないけど……あの男が強引に莉胡を連れ去ったりしなくて、本当によかった。
「第一印象はHTDの関係者だって信じられないぐらい人が良さそうだった。
……だから逆に、裏の顔が怖い男だよ」
裏表がない男に見えて、絶対に裏を持ってる。
じゃなきゃ、HTDなんかに所属してるわけがない。
昨日見た制服を調べたら、やっぱり資料に書かれた有名進学校のもので間違いなかったし、同姓同名の可能性も消えた。
優しい人間ほど怖いものだな、と薄ら思っていたら。