【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
一度はわたしのことを好きだと言ってくれていた織春。
だけど由真ちゃんとまた時間を共にするようになって半年も経てば、彼女のことを本当に大事にしてるのがわかる。
由真ちゃん曰く、
一度離れたことで昔以上に優しくなったんだとか。
「ほんとに……?
ちゃんと約束してくれる?」
「俺の特攻服に誰の名前入れてると思ってんだ」
「ふふ……、
ちゃんと……好きでいてね」
数秒前までは泣いていたのに、笑顔になった由真ちゃん。
それを横目に「千瀬も約束してくれる?」と言ってみればデコピンされた。ひどい。
1回ぐらい言ってくれたっていいのに、と拗ねていたら、千瀬が流れたわたしの髪を耳にかけてくれて。
顔をあげようとしたら、耳に触れる千瀬のくちびる。
「──もう二度と、手放す気なんてないよ」
「ッ、」
……だめ、だ。
ねだったのは自分のくせに、こんなふうに言われたらどうしようもない。顔を赤くしたわたしを見下ろした千瀬は、小さく息をついて。
「俺はむしろ、莉胡の方が心配だけど。
優しくされたらすぐにでもふらっといきそうで」
「なっ……
わたしそんなに単純じゃないわよ」
「どうだか。
十色さんに口説かれた時もなんだかんだあっさり陥落したんでしょ」
わたしが文句言えないのをわかってるから、また十色のことを引き合いに出して……!
なんて言いたくなるけど、決して嘘ではないから否定もできない。思わずぐっと黙り込めば、ぽんぽんとなだめるように頭を撫でられた。