【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
へらへらしてない……!と莉胡は言うけど、それならもっと男を避けてくれたっていい。
気安く触れられるような距離に、俺以外の人間を入れないで欲しい。……莉胡にそうやって触れていいのも口説いていいのも、俺だけなんだから。
「金曜と土曜どっちかは選ばせてあげる」
『え?』
「泊まり。どっちの夜がいいの」
『……っ、』
電話の向こうで返事に困っているのが、見えなくてもわかる。
べつにいまさら恥ずかしがることでもないでしょ、とため息をこぼせば、「土曜、」とかえってくる返事。
なんだかんだ嫌がらないとこは、お利口で好きだ。
……まあ、どっちも嫌っていう答えが出てこないあたり、莉胡は相当俺に侵食されちゃってるみたいだけど。
「じゃあ土曜。……言っとくけど、ここ最近ストレスたまってるから覚悟しとけよ」
『す、ストレスはぶつけちゃだめじゃない?』
「痛いことはしないよ。
……たっぷりいじめるかもしんないけど」
『っ……もう恥ずかしいから切っていい!?』
叫ぶように莉胡がそう言ったかと思えば。
俺の返事を聞くよりも早く、ぷつりと莉胡が電話を切る。……勝手に切りやがったな。
「で、何の話してたっけ」
「お前なんで平然と会話にもどれんだよ~。
莉胡との会話が気になりすぎて、俺らの頭ん中から真面目な話も飛んだわ~」