【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
通話を終えたスマホを置けば、アルトから即ツッコミが入る。
ハルトと於実は、見てはいけないものを見てしまったような気まずそうな顔をしてるし。……まあ追放される前の俺のこと知ってたら、きっとその反応は正解だろう。
「ちーくん意外と普通の男の子だよねー」
「意外とってなに」
「健全だよー」
……健全、ねえ。
この場合の健全はおそらく、純粋な意味の健全ではなく男子高校生としての欲望がそれ相応ってこと。まあ健全だよね。俺だって莉胡のことは欲しいわけだし。
「これじゃ莉胡も苦労すんな」
はあ、と親友から落とされるため息。
苦労すんな、なんてまるで他人事。
「苦労させられてるのは俺の方だけど」
「そんな風には見えねーよ」
「手のかかるお姫様なんだよ」
「お前"お姫様"とか言うガラじゃねーじゃん。
まじで莉胡だけは特別っつーか、なんかもうあいつすげーわ」
「はいはい」
HTDの副総長の話してたんだっけ、と。
莉胡から聞いたお見合いのことも思い返すのだけれど。……なんていうか、俺電話中ずっと、砂渡にイライラしてなかった?
このままじゃHTD関係なく、砂渡個人を俺の私情で潰し……、
じゃなくて、砂渡個人を俺の私情で敵対視しそうだ。