【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「それはどうも。
おかげで莉胡はちゃんと俺の隣にいる」
『ふふっ……もちろん今はそうだね。
だけど油断したら終わりだよ? きみはたしか、莉胡ちゃんの幼なじみなんだっけ。いちばん彼女を知ったような気分でいるかもしれないけど、彼女は嘘をつくのがうまい』
「……、」
『いまに……綺麗に手のひらを返してくれるよ。
徐々に徐々に、きみの手から蝶のようにすり抜けていく』
「莉胡を蝶だって見立てるのは良くないよ。
……あの子はそんなに綺麗に咲ける女じゃない」
莉胡に蝶なんて、似合わない。
マイペースで自由で、だけどどこか憎めない猫だ。蝶なんてそんな綺麗で色のある表現は、莉胡に似合わない。
……だって、そんな莉胡の艶やかな部分は。
俺以外のどんな男も、知ってるわけがないから。
『……何も美しいアゲハ蝶だって言ったわけじゃない。
だけど彼女は、たとえ君に羽をもがれたとしても、その檻の中をたやすく抜けてみせる』
「どうだか。……絶対渡さないから」
『それは6月、総長本人に伝えて?
まあもちろん……その頃きみの精神はボロボロになってるだろうけど』
「……俺の精神を壊すのが、目的?」
『ははっ、まさか。
最終目的は彼女を東から奪い、HTDのメンバーにすること。……ただその段階として、総長が嫌っているきみの精神を崩壊させる必要がある』
……総長が嫌っている? ……俺を?
悪いけど、会ったこともないような相手に嫌われる経験をした覚えはない。
『ふふ、楽しみにしてよ。
……もうとっくに、動き出してるから』