【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-



チ、と内心で舌打ちする。

やっぱり裏の顔があるというか、いけ好かない男だ。



砂渡が莉胡に接触したからっていう不純な理由のせいかもしれないけど。

それでも自分たちが負ける気なんて微塵も感じてなさそうな問答に、どこか疑問を覚える。



くっと顔をしかめて険しい顔をしていたら、電話の向こうがざわついた。

砂渡が誰かと会話しているのを聞いて、耳に当てていたスマホをスピーカーに切り替え、テーブルに置く。がさがさと、音が揺れたかと思えば。



『せっかくだから、俺らの総長と会話させてあげようか?』



「、」



『ちょうどお帰りになったことだし』



万智、と電話の向こうで砂渡が男を呼ぶ声。

それから聴こえた低い声に聞き覚えはないし、やっぱり俺がこの男に嫌われるような理由もない。




『電話はお前が対応するって自分で言ってただろうが』



『だって、彼があまりにも喧嘩腰だから面白くってさ。

莉胡ちゃんのこと相当好きみたいだよ?』



『はっ、どうせ俺には負けるっての』



……電話する気があるのかないのか。

っていうか俺が誰かに莉胡を好きなことに関して負けるわけがないでしょ。ずっと一緒にいて、誰よりも長く莉胡を想ってきた俺が、誰かに負けるわけない。



そこは、俺だけの自慢だから。

──莉胡をずっと好きでいるっていう、覆ることのない事実は、俺の自信だから。



『──まあいい。

どうせ俺らの情報も向こうにいってんだろ?ならいまさら名乗る必要もねえし、聞くこともねえっての』



「……なんで莉胡に関わろうとすんの。

東西と喧嘩したいなら莉胡を巻き込む必要なんかないでしょ」



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