【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
『正攻法でうまくいくわけがねえ。
……でも、卑怯なやり方をする気もねえんだよ』
「……南は治安が悪い。
それはどういうことか、言わなくてもわかるだろ。……原因は、HTDだ」
『俺らが普段なにやってるかが、問題じゃねえ。
……んなことやってても、非道な手を使わず手に入れる価値がある女だから、そのあたりはわきまえてる』
白葉がそこまでして、手に入れたい女の子。
それが莉胡だって言うんだから、本当、どうなってるんだか。……一体莉胡は暴走族の総長にどれだけ好かれたら気がすむんだ。
「念のため聞くけど……
俺が7代目に就任する前、莉胡が6代目とも付き合ってたことは、」
『んなもん知ってるに決まってんだろうが』
……ってことは、十色さんの存在は知ってるわけで。
十色さんになら勝てないけど、俺には勝てるとか、そういうなめてる話じゃないよね?
『はっ、とにかく。
俺らは逃げも隠れもしねえから、6月まで待ってろってんだよ』
「……最後にひとつだけ聞いていい?」
そう問えば、返事はないし無言だけど。
電話を切らないあたり待ってくれてるんだろうと思いつつ、口を開く。
「……なんで、莉胡なの。
深い意味で聞いてるわけじゃなくて、なにげない疑問。……なんで、莉胡じゃなきゃだめだったの」
十色さんも、春も。
それこそ俺だって同じ問いかけをされたら、それぞれの答えがある。──そして、白葉にももちろんそれはあって。
『なにわかりきったようなこと聞いてんだよ。
……莉胡じゃねえとだめだから、莉胡じゃねえとだめなんだろ』
まるで言葉遊びでもしてるみたいな返事。
だけどそれは俺にとってはわかりやすくて単純明快なもので、「そうだね」と返す声にはわずかに笑みが混ざる。──ああ、いますぐ、莉胡に会いたい。