【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
電話を切ってから、なにも口をはさまなかったミヤケをちらりと見れば、「おー、なにもなかったしそっちも無事そうだなー」と莉胡と会話していた。
そのミヤケに、「もうすぐ帰る」と伝言してもらって、一息つく。
「どう対策とるのか、決めたのか?」
「……うん、決めたよ」
ぴりっと、室内の空気が張り詰めるけれど。
そのあからさまな変化に思わず笑えるほどには、いまの俺には余裕があるんだと思う。
「……どうするんですか?」
じっと見つめてくる於実。
それを見てから、「なにもしないよ」と返せば。
案の定、みんなから「は?」とでも言いたげな顔をされた。
……っていうかうちの副総長は声に出してた。やかましいんだよミヤケ。
「お前、本気か?」
「本気に決まってんでしょ。
傘下に通達も出さないし、これはここだけの話でおさめる。乗り気じゃないならこの話、おりてくれても構わないよ」
「………」
「……ほんとはさ、いろいろ準備する気だった。
でも話したらあの言葉に嘘はないのはわかる」
「……でもお前、そんなの、」
「月霞に入って月日も浅ければ、7代目なんてまだ数ヶ月にも満たないけど。
俺だってずっと莉胡のこと好きだったんだから、あの発言が嘘じゃないのはちゃんとわかるよ」
確証もないのに、甘いかもしれない。
だけど俺と同じ莉胡を好きな気持ちに、嘘偽りがないのはわかる。──だから、たとえ敵だったとしても、その気持ちを信じてみたいと思っただけ。