【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「わたしは千瀬のことだいすきだけど……
ミヤケが千瀬を大事に思ってる気持ちには、負けたってかまわないと思ってるもの」
「気持ち悪い言い方しないでよ……
莉胡と比べたら、色々気持ち悪いから」
「でも、本当にそれぐらいミヤケは千瀬を大事に思ってるんだもの。
……ミヤケが女の子に生まれてたら、きっとわたし、敵わなかった」
「………」
「去年の夏の終わりから、すこしずつ月霞に出入りするようになって、ミヤケとも何度も話してるけど……彼女さんのこと、本当に大事にしてるのは知ってるもの。
あれだけ千瀬と楽しそうに会話してるけど、ミヤケは彼女の前でほとんど千瀬の名前出さないらしいわよ」
「……出されても困るけどね」
「ふふっ。
"いくら大事な親友でも、彼女が別の男のこと考えたらむかつくだろ?"って言ってたの」
……なんか、そういうのミヤケっぽくないな。
あんまり深いこと気にしてないのに、やっぱりまわりのことよく見てるっていうか。
「ああ見えてミヤケは、ちゃんと感情を使い分けてるから。
そんな風に心配しなくたって、大丈夫よ」
「………」
「千瀬が月霞とわたしの両方を大切にしてくれるように……
ミヤケも、千瀬と彼女の両方を大事にしてるだけだもの」
「……あいつさ、」
顔を上げれば、莉胡とすぐそばで目が合う。
吐息が触れ合うその近さで、まるで水面が光を受けるような煌めきを宿す瞳を覗けば、ゆっくりとまぶたを伏せる莉胡。
「文句言うし調子乗ったこと言うけど……
俺にわがまま言ったこと、1回もないんだよ」