【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
06.恋心デッドライン
.
。
。
.
*
:
◇
この間会ったときよりも綺麗になった?
そう問われたのは唐突で。前に会ってから約2週間しか経ってないのに、そんなことあるわけがない。お世辞をありがとうと微笑んだわたしに、彼はくすりと笑った。
「彼に止められなかったの?
お見合いに行くなんて反対されるでしょ」
「……言ってないもの」
「そうなんだ。ばれたら怒られそうだね」
「………」
そうなんだ、じゃなくて。
わたしはいま、お見合いに来たはずなのだ。──大事な取引先である、砂渡の息子との、お見合いに。
なのにどうして、堅苦しい着物から普段着に着替えさせられて、車に乗ってるんだろう。
……おかしい。 誘拐する気なんじゃないの!?
「念のため聞くけど、
HTDに連れていくわけじゃないでしょうね」
「はは、まさか。
向かってるのは俺の家だよ」
「……はい?」
「だから、俺の家に向かってるんだって。
あんな堅苦しい服着て、あんな堅苦しい料亭で話をするなんて莉胡ちゃんも嫌でしょ?」
……たしかに好きではないけど。
でも、家っておかしくない? え、おかしいよね?
「それこそ千瀬に怒られる……!」
「うん、だからばれないようにがんばって」