【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
他人事な……!
千瀬に怒られるの嫌なんですけど!?と文句ありありの顔をしていたというのに。
「そういえば、何も動かないんだね」
「……、なにが、」
「東西のこと。
……てっきりなにか動くかと思ったのに、何も変化なし。面白くないなあと思って」
「………」
わたしたちは別に、HTDに面白さを提供するために動いてるわけじゃない。
水面下で何かやってるの?と楽しそうにミケは笑みを浮かべるけど、そんなものはじめから有りもしないと、あなたがいちばんよく知ってるくせに。
……ほんと、わざとらしくて、不可解な人。
「あのあとはもう喧嘩してないの?」
「おかげさまで。
今までにないくらいラブラブだから安心して」
これは嘘じゃない。
千瀬は素直に言葉を口にしてくれるようになったし、いままで以上にわたしを大事にしてくれる。"例"の土曜日は、ほんとに、散々だったけど。
どんな風に散々だったとかもう、言えない。
しかもあの会話をほかの幹部たちが聞いていたらしく、アルくんにはもうやめてと言いたくなるほど質問攻めにされた。なにも言わなかったけど。
「別れてくれたらいちばん楽だったんだけどな」
翌日の日曜に起き上がれなかった、ということを匂わす千瀬の発言にさらにニヤニヤされたものだから、ほんとうに居た堪れなかった。
腰が痛くてほんとに起き上がれなかったんだもの。お母さんにもニヤニヤされたし、完全にばれてる。
「……別れないわよ。
たとえどれだけ喧嘩しても、わたしから別れるって言葉はつかわない。……きっと、それは彼も同じ」