【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
──ああ、そうだ。
どうして気づかなかったの、わたし。ほかのことに気を取られて、みんな特にそれを重要視していなかったから。……たった今まで、気づかなかった。
……わたし。
於実の入学式の写真を、見せてもらったのに。
「生憎、仲良しの先輩後輩でもないんだけどさ。
入学して間もない頃から目立つ彼が、月霞の7代目幹部だってすぐに気づいたよ。……だから先に近づいておいた」
「於実に……なに、したの、」
「何もしてないよ?
でもきっと守られてきたお姫様は知らないんでしょ?」
「……っ、なにを、」
「於実は、莉胡ちゃんの中学の後輩らしいね。
七星とはまた別の意味で、昔から君に懐いてた。……だからその影響で、莉胡ちゃんの幼なじみである七星に誘われて、月霞に関わることになった」
そうだ。
於実はわたしにとって中学時代からのかわいい後輩。それは千瀬にとっても同じで、信頼のおける大事な後輩なのに。……なのに。
「……実は彼、
ずっと莉胡ちゃんが好きだったんだって」
「、」
「……万智から命令されたんだ。
"七星を確実に傷つけられる証拠が欲しい"って」
ああ、嫌な、予感がする。
……ううん、予感なんて曖昧なものじゃない。
「HTDのメンバーと何かあったとしても、七星はきっと傷つかない。
だけど信頼してる後輩が、大事なお姫様を傷つけたって知ったら……平然とはしてられないよね?」
「っ、……やめて、」