【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
トモとふたりで言葉を交わしていたら、
教室に飛び込んできたのは千咲で。
「おっ前……!なんで来たんだよ!」
「えっ、なんかだめだったの!?」
「遅刻したお前がホームルームに間に合うかアルトと賭けてたっつうのに……!
くっそ、あいつにラーメン奢ることになったじゃねーか」
「理不尽……!僕悪くないのに!」
むうっと頬をふくらませてる千咲。
かわいいから「よしよし」と頭を撫でてあげる。ぬいぐるみのライオンみたいにふわふわのオレンジだった髪は、春休みの間に桜色になっていた。
それをじっと見つめてくるのはトモで。
「……なに?」
「いや、千咲も男だろ。
そーいうの、千瀬が嫌がんじゃねーかと思って」
「……髪撫でてあげてるだけよ?」
嫌がるのかな、とふつふつ考えていれば。
先生が来て、会話は終了。席についてホームルームを済ませてから向かう先は体育館で、始業式だ。
正直始業式なんて出たくないとみんな思ってるだろうけど。
これが終われば今日はおしまい。ついこの間まで高校生になりたてだったのにもう明日には新入生が入ってくるのかと思うと、わくわくするようななんとも言えないような。
「……もー、校長先生の話長いー。
いつも始業式でも終業式でも大してかわんないこと言ってるよ」
始業式がひとまず終われば、教室にもどるだけ。
それまでの道すじで寄ってきた由真ちゃんが、「放課後どうするの?」とわたしに聞いてくる。