【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
頭の中で鳴り響く警鐘。
痛いほどに鳴るそれに、こんなことなら怒られるの覚悟で連絡しておけばよかったと、心底思う。
……お願いだから、やめて。
「なに、傷つけられるのが怖くて"やめて"って?
それとも七星を想う愛情?ラブラブだって言ってたもんね」
「ちがう……、
そんなことしたら、きっと、」
いちばん深く傷つくのは、於実だから。
わたしよりも千瀬よりも深く自分に残る爪痕に何度も何度も苦しむことになるのは、於実だから。──わたしの大事な後輩を、傷つけないで。
「ソレってさ、ただの偽善じゃない?」
車の中じゃ逃げることすらできなくて。
見せつけるようにネックレスチェーンを引っ掛ける指先。おそろいの三日月が揺れて、あ、と思った瞬間だった。
「っ、最ッ低……、」
つまらなさそうな表情を浮かべたミケが、空いてる左手も躊躇なくチェーンにかけて、抵抗虚しくそれを引きちぎる。
……ほんと、さいあくだ。最悪すぎる。
「そうやって心配してるふりして。
……結局は傷つくのがただ怖いだけでしょ」
「っ、かえして、」
「……証拠が揃えば返してあげる。
おそろいのネックレスとペアリングだっけ?まさかなくしたなんて言い訳できないよね?」
ネックレスチェーンなんて、わたしが力を入れて引っ張ったって千切れるわけがない。
それが容易に千切れてしまうということは、この男にわたしが力で勝てる術なんてない。逃げ出すなら車を出た瞬間だけれど、場所すらわからないんだから逃げ道は皆無。
──完全に、行き止まりだ。