【完】ファントム・ナイトⅡ -アノ日ト儚キ妃-
「どうして……そこまで、わたしにこだわるの。
こんなやり方されたって、わたしは、」
「卑怯なやり方をしないって万智は、彼に言ったらしいけど。
……それってただ万智が勝手に言ってるだけで、俺には関係ないからね」
「、」
「俺はただ命令されたことをやるだけ」
「あなたは……白葉をどう思ってるの。
どうしてそこまで彼のために、」
「万智のためじゃない。
俺らはただ、取引してるだけ」
取引……?
なにそれ、と疑問を浮かべたのがはっきりと目に見えてわかったようで、ちぎったチェーンごとネックレストップとペアリングをポケットにおさめた彼は、ふっと口元に笑みを浮かべた。
「あの男は、ただ莉胡ちゃんが欲しいだけ。
表向きに正攻法とは言えなくても、ある程度常識の範囲で別れさせる手段で自分のモノにしたい」
「……なら、あなたは」
「俺? ただの暇つぶしだよ。
ほら俺、見た目悪くないでしょ?頭脳もそこそこだし、だからって運動もできないわけじゃない。家柄も悪くないし、いろんなものが退屈なんだよね」
……ああ、だから。
わたしにとっては、千瀬がいることでこんなにも煌めいて雅に見えるこの世界が。──この人にはつまらなくて、褪せたようにしか見えてない。
ある意味、ドラッグなんかを使って脳が完全にだめになってる人よりも。
理性をもってして傷つけることの出来る人の方が、よっぽど、こわい。
黒い噂のあるHTDに所属した理由だって、きっと面白いからとか、そんな理由で。
人を傷つけることでしか楽しみを得られないなんて。
「……可哀想な人ね」